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「年金」で「自己責任」を負わされる国民

200455

宇佐美 保

 

 イラクでお気の毒にも人質になられた方々へ、「自己責任バッシング」の大合唱に狂っていたマスコミそして我が日本国民は、その無知さ故に、「年金」で「自己責任」を負わされているのに全く気が付いていないのです。

本当に愚かだと思います。

勿論、その愚かさは野党民主党も然りです。

拙文《インチキ評論家が年金は黒字と嘘を言う》、《一元化の前に共済年金の実態を明らかに!》等にも書いてきましたように、「国民年金」「厚生年金」の破綻は、官僚政府が唱えるように「少子化」が原因ではなく、官僚族議員達が、「年金積立金を貪り食った為」なのです。

この件に関しては、文芸春秋5月号での、堺屋太一氏(作家・元経済企画庁長官)、岩瀬達哉氏(ジャーナリスト)、金子勝氏(慶応大学教授)の鼎談による“「年金食いつぶし」官僚弾劾裁判”を御覧になれば、腰を抜かす程驚くと存じます。

 

 年金がおかしくなった根本の原因は何か。それは、年金官僚が年金利権に固執し続けていることです。

 

 と語っている岩瀬氏は、次の驚くべき事実を暴露しています。

 

……どうやら年金制度の発足当時から、すでに年金官僚たちは利権のことを考えていた。

 現在の厚生年金保険法の前身である労働者年金保険法が制定されたのは、戦争中の昭和十六年のことです。この法律の起案者で、戦前の厚生年金保険課長だった花澤武夫氏が、一九八六年に厚生省の外郭団体が主催した「厚生年金保険の歴史を回顧する座談会」で当時を振り返っているのですが、身内相手ということもあって、驚くほど率直にホンネを語っている。

「年金の掛け金を直接持ってきて運営すれば、年金を払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない使ってしまったら先行困るのではないかという声もあったけれども、そんなことは問題ではない。……将来みんなに支払う時に金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばいいのだから、それまでの間にせっせと使ってしまえ」と自ら手口を明かしているのですから、開いた口がふさがりません。

 

 全く、岩瀬氏が暴露された「戦前の厚生年金保険課長だった花澤武夫氏」談話の如くに、年金官僚達は、せっせと私達の大事な年金積立金を貪り食っていたのです。

 

 岩瀬氏は、次のように解説されます。(私が、箇条書きとしました)

 

 年金資金運用基金は、次の三つの事業を行なってきました。

1. 年金加入者や受給者に保養施設を提供する「大規模年金保養基地(グリーンピア)事業

2. 年金加入者などに融資を行なう「融資事業」

3. 年金財源を増やすために株式などで運用する「資金運用事業」

この三つがすべて壊滅的な状況にあります。

 

 そして、これらの悲惨さを順次暴露されます。

 

 「グリーンピア事業」を行なってきた年金資金運用基金は、年金官僚が築き上げた最大級の年金利権といっていいでしょう。理事長をはじめ、七十七人の年金官僚OBが天下っているこの特殊法人に、これまで年金から、事業資金や運営経費として約三十九兆九千億円もの資金が流れ込みました。この資金は、厚生労働省本体の年間予算の二倍以上に相当し、年金積立金の約二五%にあたります。この年金資金運用基金だけで、これまでに約七兆八千六百億円もの年金を食いつぶしてきた。厚生労働省本省やその他の天下り先まで含めると、実に約九兆四千億円の年金が失われたのです。

 

 「融資事業」がまたひどい。住宅ローン融資での焦げ付きが明らかになっていますが、公表されているだけでも約六百億円の年金掛け金が戻ってこない可能性が高い

 そもそも、この融資事業は絶対に利益が出ない仕組みになってしまっているのです。というのは、これまで年金資金運用基金は直接、積立金を運用するのではなく、一度、財務省資金運用部を通し、そこから資金を借りて運用する、という形態をとっていたからです。問題は、財務省から借り出す際に生じる金利。これが現在、平均三・八一%なのですが、たとえば年金資金運用基金が「一般住宅融資」で貸し出す金利は二・七七〜二・六一%と、逆ザヤになっている。つまり、融資事業をすればするほど損をする。

 

 さらに問題なのは「資金運用事業ですね。二〇〇二年度だけで二兆五千億円もの損失を出し、累積損失は六兆円を超えている。これ以上、彼らの手に運用をまかせておくほど危険なことはない。

……年金資金運用基金でどういう人たちが株式を運用しているかを調べるために「資金運用業務概況書」を読んでみると、恐ろしいことが書かれている。

〈職員の運用能力向上のために、国内長期研修、証券アナリストの資格の取得を目指した通信教育など、各種研修をしている〉。つまり、通信教育を受けたり、講習に行ったりしているアマチュア投資家が巨額な資金を運用したわけです。その結果、二〇〇二年度末までの累計で六兆円もの年金がきれいにすられてしまった

 

 本来は、この「百四十八兆円」と云われる私達の「年金積立金」は、資金運用事業によって何倍かに膨らまさなくてはならないのに、株の買い支えなどさえ行ったりして、ドブに捨てられているのです。

 

 その上、次の金子氏の発言です。

 

日本医師会総合政策研究機構は、特殊法人には約六十兆円の不良債権が眠っていると推計しています。今回の年金改正案で、九十五年間という不条理なまでの長期にわたって積立金を取り崩すことになっているのも、この不良債権を隠蔽するためではないか。

 

 こんな酷い年金運用(と云うより、「年金の貪り」)を行っていながら、年金害虫たちは高給を貪って居るのです、岩瀬氏の談を続けます。

 

年間二兆五千億円もの損失を出しておきながら、これまでの実績を調べると年金資金運用基金理事で二千万円近い年俸と、一期二年を勤め上げると約九百万円の退職金を得ている。理事長に至っては二千五百万円を超える年俸に加え、一期四年勤め上げると約二千三百万円の退職金を懐に入れるのです。もちろん、これらもすべて私達の年金から出ている。

 

 3人の人質になられた方々、そしてご家族へ、「自己責任バッシング」の大合唱に狂ったマスコミそして我が日本国民は、何故この事実に気が付かないのですか!?

本当に愚かだと思います。

「自己責任バッシング」の大合唱に狂った方々は、無知のままで、この「年金問題」を糾弾しないと(と云うより糾弾してこなかった為)、結局は「年金問題の自己責任」を自ら負わなくてはならないのです。

 

 こんな年金問題での不正にこそ自己責任をとれ!」と、年金官僚や年金族議員達にぶつけるべきではありませんか!

(先のバッシング以上の勢いで!)

 

 年金改革などは、その後のことです。

 

 ですから、次のようなメールを民主党の枝野議員に送りました。

 

枝野議員ご自身も、年金は「世代間扶養」に洗脳されているのが残念です。

「国民年金」、「厚生年金」は、役人達が「積立金」を食い潰してしまいました。

しかし、彼等は「共済年金」を後生大事に育ててきています

この「共済年金」は「積立金方式」で運用されているはずです

従って、「国民年金」、「厚生年金」と「共済年金」の現在の資産状況、運用状

況をはっきりと比較して頂きたいのです。

 

 でも残念ながら、枝野議員からのご返事は、

 

……ご指摘の点ですが、現在の公的年金制度にも、貨幣価値の変動に備えるという側面がございます。

そのため積み立てだけではなく互助の制度が必要となっているのです。

ただ、民主党案では、世代間互助のみならず、最低限の基礎年金部分を消費税という形で国民にご負担いただくことでで、世代間互助のみならず、国民全体での互助システムの構築で、公平・公正・透明で安心・持続可能な年金を作ることができるとさせていただきました。……

 

 と云うことで、“「国民年金」、「厚生年金」と「共済年金」の比較”には頭が回らないようです。(それとも、民主党の票田である共済組合への気兼ね?)

民主党枝野議員の心配する“貨幣価値の変動に備える”は、「共済年金」とて同じなのです。

 

況わんや、「年金官僚、年金議員の責任追及」等、思っても居ないようです。

 

 枝野議員は、年金の民主党案に自己陶酔しておられるようです。

私達にとっては、民主党の改革案なんかは、今の段階ではどうでも良いのです。

 

 そして、年金改革の前に、「年金官僚、年金議員達による年金食いつぶしの責任追及」を徹底的に行うべきなのです。

 

 ですから、私は、懲りずに菅さん他にメールしました。

でも依然として、民主党全体が、民主党案に自己陶酔しているようです。

 

 そして、衆院補選に3戦全敗しました。

この背景として、朝日新聞(426日)には、

 

「自民の年金政策の方が民主よりしっかりしていると判断した」

自民候補の街頭演説を聞いて「年金問題をよく勉強し、きちんと話しているから」

 

 との町の声が載る始末です。

 

 民主党の方々は、養老孟司氏の「バカの壁」を読まれたのでしょうか?

読んでも、ご自身でバカの壁を築いていて、その内容を活用されていないのでしょう。

拙文《バカの壁と世論》にも引用させて頂きましたが、

 

学者はどうしても、人間がどこまで物を理解できるかということを追究していく。……逆に、政治家は、人間はどこまでバカかというのを読み切らないといけない

 しかし、大体、相手を利口だと思って説教しても駄目なのです。どのぐらいバカかということが、はっきり見えていないと説教、説得は出来ない。相手を動かせない。従って、多分、政治家は務まらない。……

 

 どうも、民主党の方々は、枝野議員を筆頭(?)に、学者が揃っておられるようです。

 

 ですから又懲りずに、メールしました。

 

民主党は、最も簡単の、小泉流のワンフレーズで勝負すべきなのです。

「国民年金」「厚生年金」は役人と自民党に食い潰された、その証拠には「共済年金は」黒字経営だ!

こんな自民党体制を打破しなければ「年金の明日はない!」と訴えるのが肝要なのです。

今の時点は、民主党案などは、暫くお蔵に入れておくべきです。

もっとバカを相手にしていることを意識すべきです。

 

 でも、勿論返事は来ずに、菅氏の年金未払いまでが発覚しました。

愚かなことです。

ですから、又メールしました。

 

先ずは、菅氏は辞職すべきです。

言い訳なんか聞きたくないです。

言い訳弁明しないことを民主党の売りとすべきです。

 

 なにしろ、岩瀬氏は、次のように語っています。

 

国民年金特別対策本部で強制徴収をやっているのですが、当初は三十億円の回収を目標にしていた。ところが、国民年金特別対策本部につぎ込んでいる予算は、実に百四十億円。しかも、現実にはやっと一億六千万円の保険料を徴収できるに過ぎません。ここで生じる莫大なツケも、国民に回されるのです

 

 この様に、私達の年金から「百四十億円」も注ぎ込んで、国民に年金の支払いキャンペーンを行っている、その張本人である小泉政権の閣僚達が年金未払いであったのですから大問題です。

その中に、いつも私達を小馬鹿にしていながら

「今まで起こったことをとやかくいってもしようがない」。自分の60歳までの納付履歴は「個人情報だ」と連発して公表を拒んだ

福田官房長官迄も混ざっていたのです。

 

ですから菅さんはここで潔く辞職して、自民党政権を倒すべきです。

何れにしても、私達が、年金官僚、年金族議員達を糾弾し、彼等の自己責任を追及しない限り、いくら年金制度を改革したところで、彼等に私達の年金積立金を食い尽くされてしまうのです。

 

 

(補足:1

 

 民主党が、年金官僚達に「年金は世代間扶養」であるなどと騙されずに、「年金の本質は積立金方式」を主張し続けて、年金官僚達を糾弾してきていたなら、菅さんや、鳩山氏が「国民年金未払い」であっても、安倍晋三自民党幹事長の

保険料を払っていない人は(その分を)もらえない。年金財政上も、その人には出さないからロスにはならない。報道の仕方がおかしい。犯罪、脱税ではない

発言通りなのです。

しかし、「年金は世代間扶養」を認めてしまったら、「年金の支払いは国民の義務」となるのです。

従って、与党議員(特に閣僚達)にとっては、安倍氏の発言は間違いで「年金未払いは犯罪、脱税」でもあります。

 

(補足:2

 

 河村たかし民主党議員のホームページには、「河村たかし本人の被保険者記録照会回答票」を載せておられます。

他の議員も、見習ったらどうでしょうか?

 

テレビ朝日の「たけしのTVタックル」で、「議員年金廃止」を訴えている、河村たかし議員に対して、自民党舛添要一議員は“マックス・ウェーバーに関しては、私の方が専門だ!”と怒鳴っていました。

何故なのでしょうか?

確かに、桝添氏は「東大助教授」でしたが、何も、その番組中、学問的知識を誇示する必要は無いと存じました。

 

 そして、桝添氏は退職金代わりとしての「議員年金」の必要性を唱えていましたが、桝添氏を含めて、「議員年金」を考慮して立候補したのでしょうか?

 

(補足:3

 

 岩瀬氏は、「国民年金」「厚生年金」では、次の3事業を行ったと語っていますが、

 

1. 年金加入者や受給者に保養施設を提供する「大規模年金保養基地(グリーンピア)事業」

2. 年金加入者などに融資を行なう「融資事業」

3. 年金財源を増やすために株式などで運用する「資金運用事業」

 

『共済年金』では、上記の1)、2)のような全く馬鹿げた事業を行っていますか?

 

『共済年金』では、3)のに於いて、株の買い支えなど行いましたか?

 

『共済年金』では、民間会社に「資金運用事業」の代行せさ、予定利回りの5.5%を超えた分をその会社に気前よく上げてしまう制度を作りましたか?!

 

真面目に『国民年金の積立金』『厚生年金の積立金』の運用を行っていたら、いくら今は低金利時代とは言え、バブル時代の蓄えによって、今でも立派に「世代間扶養」等と嘘を付かずとも「積立金方式」で運用出来ていたはずです。

現に、『共済年金』は、今もって、立派に「積立金方式」で運用されているのでは?!

 

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